概要


ブリーフセラピー・ネットワーク・ジャパン(The Brief Therapy Network Japan;以下、本会)は、ブリーフサイコセラピー学会(※1)とは異なり、まさにミルトン・エリクソンの系譜を受け継ぐブリーフセラピーにだけ焦点をあて、それを学び探求するための研究会として1996年10月に発足した(設立者:宮田敬一:2020年1月現在の会員数は100名程度)。

会誌「ブリーフネット」は1997年12月に刊行され、本会の機関誌として1年に1巻の発行を続け、11巻(2008年3月刊行)より、「ブリーフセラピーネットワーカー(以下、本誌)」と改称された。改称の背景には、掲載される記事や論文にいくらかアカデミックな内容や概説を多くし、セラピーのアイデアや技法、職場の雰囲気などを紹介し合い、気楽に会員が交流するといった記事を多くしていきたいという宮田敬一氏の考えがあった(宮田,2008)。

宮田氏は、本誌に掲載される論文や記事が専門書や論文に引用される程度になることを願っていた。本誌の編集委員会は、宮田氏の持っていた理念に応えるべく、本誌の公共性を高めようと、本誌13号(2010年3月刊行)から定期刊行物に割り当てられるISSN(国際標準逐次刊行物番号)を取得し、表紙にその番号(ISSN 2185-1530)が示されるようになり、本誌14号(2011年3月刊行)から、以前から編集委員会による論文等の査読が行われてきたことを踏まえて「投稿規定」を明示するようにした。

残念なことに、ブリーフサイコセラピーやブリーフセラピーを国内外で牽引してきた宮田敬一氏は2011年2月10日にご逝去された。本会は、宮田敬一氏のご遺志を受け継いで活動を展開していこうとしている。

  • ※1:ブリーフサイコセラピーは、精神分析や認知行動療法といった特定の限定された心理療法・精神療法のアプローチ・モデルでなく、後述するブリーフセラピーをも含めて、効果的で効率的なアプローチを希求する心理療法・精神療法の総称である(ブリーフサイコセラピー学会,1996;2004)。ブリーフサイコセラピー(Brief Psychotherapy)は日本国内のみで通じる用語である。海外では、同様の意味でブリーフセラピー(Brief Therapy)と表記されている。日本国内でブリーフセラピーと表記する場合は、ミルトン・エリクソン(Milton H. Erickson)に端を発する心理療法・精神療法を指し(宮田,1994)、アプローチ・モデルが限定されてしまう。ちなみに1991年に研究会として発足し、その後に学会となった日本ブリーフサイコセラピー学会(創設会長:宮田敬一)は、米国で1985年12月に開催されたEvolution of Psychotherapy第1回会議の開催主旨と同様の理念を持って、心理療法・精神療法のアプローチの壁を取り払って立場を超えて心理療法・精神療法の特長、有効性や効果、限界について検討をしようと設立された世界最初の学術団体である。

文献

  • 宮田敬一(編) 1994 ブリーフセラピー入門.金剛出版.
  • 宮田敬一 2008 「ブリーフセラピーネットワーカー」誌への招待. ブリーフセラピーネットワーカー,Vol.11, 巻頭言.
  • 日本ブリーフサイコセラピー学会(編) 1996 ブリーフサイコセラピーの発展.金剛出版
  • 日本ブリーフサイコセラピー学会(編) 2004 より効果的な心理療法を目指して:ブリーフサイコセラピーの発展Ⅱ.金剛出版.